こんにちは。YOKAの角田です。
今回はモノづくりについてのコラムです。
YOKAの製品は、名入れしたグッズ的なものを除き、全て自社でアイデア段階から考えたものです。 「世の中で流行っているアレを、ちょっと変えたもの」みたいなものを作るのではなく(そういうのは作っていても面白くないのです)、「ありそうで、無かったもの」を作りたい。
デザインの定義は今や多様ですが、僕の中で一言で表すとしたら「アップデート」であると言えます。
人間は何も持たない裸一貫から始まり、道具を使うようになってからはその「道具」を進化させて生きながらえてきました。(人間の肉体のフォーマットは、今も原始時代も変わらないそうです)
遺伝子がほとんど同じと言われているチンパンジーと人間との違いは何か。それはズバリ、道具を進化させることができるか。乱暴に言えば「デザインするかどうか」といえます。
初めは蟻の巣の中から蟻を引き出すための、1本の枝だったかもしれない。それを「アップデート」し、より良いやり方はないか?もっと効率的に栄養をとる方法はないか?そう考えて次々に道具を進化させた先にあるのが今の人間であり、連綿と続いてきたその行為が「デザイン」なのだと思います。
少し話はそれますが「機能が素晴らしくて、形が良い」のは良いが、「機能は前のものより劣るが、形は良い」というのはダメ、というのが僕の基本的な考えでして。 「今あるものの良くない部分を改良し、より良いものにしていく」小さな発明を起こすことがデザインの本質であり、「形を良い感じにする」というのは二次的なもの、と考えています。
さて、なにかモノを作るときに、まず何をするか。
僕はまず、既存のものを徹底的に使い倒します。七輪でいうと、珪藻土の七輪を(たとえよく使っていたのだとしても)改めて使い倒し、「自分でも気づかなかった、受け入れてしまっていたマイナスポイント」を洗い出す。
そのアイデアは主にメモなど文章で出てくるわけですが、形にするために、すぐに工場に頼めるわけもありません。まだ形も定まってないわけですからね。
そこで主にどうするかというと、「紙で」試作します。それ以外にも、スチレンボードや、粘土で作ることも。
まず今までになかった形を「立体化」させ、概念の世界でなく、現実の世の中に存在させてみる。そこがスタートラインです。
それを見ながら、今度はそれに対してアップデートをかけていく。「もっとこんな形のほうが良いのではないか?」「いやいやこんなパターンも?」様々なカタチを試します。
そうしてようやくある程度の形が定まったところで、工場に「実際に使える試作」を依頼する段階にきます。もし本番の素材で試作をするのが難しければ、別の素材で試したりもします(金属の皿を作るには型が必要、となったら、木の削り出しで一旦試す等)。
そうして出てきた「使える試作」を、それはもう使いたおします。 (七輪の2号機は工場で手作りしたものなので、もう使いすぎてぶっ壊れています)
大事なのは「贔屓目で見る」をしないこと。自分が作ったものだからと特別な感情を抱くことなく、むしろ厳しく文句を言っていく。 文句を言い過ぎて、最初に紙で試作したものから形が大きく変わるなんてザラです。それはまだいいほうで、使い倒しているうちに企画自体がなくなるなんてことも…
そうして試作自体にアップデートをかけ、これぞというところに追い込んでいき、それでもまだ終わりではありません。 大量生産には「クオリティを維持する」という要素が入ってきます。
大量に作る中では、当たり前ですが1つ1つのものに目が行き届きません。だからこその大量生産だとも言えますし、そういう「環境」を見越した上でのデザインに、落とし込んでいく必要があります。
例えば試作をしていく中で、すごくブレが生じているパーツがあったとしたら、それは今後も影響があるはずなので、別のパーツや形に変えていく。
そんな感じで、使って試作して、行ったり来たりの繰り返し。そうしてようやく、どんなに厳しくしても簡単には壊れないものが出来上がります。
七輪でいうと、土のものが0号機(紙の試作に相当)。ステンレスになって円筒の1号機。七輪の形の2号機。それを使い倒して、形を改良した3号機。 そして、今手もとにあるのが、型を使って量産と同じように作った4号機。これに対して現在、最後の追い込みをかけている最中です。
ぜひ、この厳しく鍛え上げられた最終形を楽しみにしていただければと思います。 クラウドファンディングが終わってもまだ続きますので、どうぞご注目ください。